2011年(平成23年)3月に発生した東日本大震災により新地町は震度6強の揺れに見舞われ、波高9.3m以上(場所により10m以上)、最大遡上高約40mに上る大津波が襲来、町の総面積の約1/5にあたる約904ヘクタールが浸水しました。全壊・大規模半壊・半壊した家屋は630戸(津波516戸、地震で114戸)、JR常磐線の新地駅の駅舎および周辺の線路なども流失し、ガレキが散乱し町の景色は一変、壊滅的な被害を受けました。さらには、福島第一原子力発電所の事故も重なり、未曽有の困難に直面しました。
震災後、全国より多くの支援を受けながら町と町民が一体となり、復興に向けて歩みを進めてきました。
町では「住まい再建事業」を最優先課題として、住宅を失った津波被災者の高台移転に取り組むとともに、新地駅周辺に盛り土を行い安全な高さにした市街地を再建しました。防災集団移転促進事業は早くから進められ、高台など7カ所に団地を造成しました。さらに被災者の住宅を確保するため、災害公営住宅8団地や被災高齢者向けの共同住宅も整備しました。
JR常磐線・新地駅と周辺の路線は内陸に移設し2018年(平成28年)12月に運転再開。常磐線の跡地は盛り土され、新たな地方道相馬亘理線として2021年(令和3年)4月に全線開通しました。
町道は44路線すべての復旧が完了、県道も全路線が復旧しています。震災の教訓を生かし、沿岸部から内陸に向かう避難道路は踏切をなくすなど、津波からの避難を第一に考え、インフラ整備を進めました。
2020年(令和2年)11月、JR新地駅周辺地区で進められてきた新地駅周辺市街地復興整備事業が完了。「新地エネルギーセンター」でつくられたエネルギーを地域で効率的につかう「スマートコミュニティ事業」に取り組み、環境共生型の災害に強いまち「観海(かんかい)タウンしんち」が誕生しました。「観海堂公園」や新地町文化交流センター「観海ホール」、新地駅前フットサル場「スマイルドーム」、新地町複合商業施設「観海プラザ」、天然温泉の温浴施設やホテルが集積し、新たな交流の拠点が生まれました。
東日本大震災の津波で約160戸が流失した釣師(つるし)地区に2019年(令和元年)、「釣師防災緑地公園」が開園しました。周辺には海や温泉があり、自然の中で子どもから大人までが交流し楽しめる魅力的な公園です。加えて「減災」「震災アーカイブ(震災記録)」機能も併せもち、「想いの丘」には慰霊碑や震災モニュメントが立ち、パークセンター(管理棟)には、震災・復興の年表や震災前のジオラマなどが展示されています。地元の人の体験を聞きながら、震災の痛みと震災後の復興の足跡、未来へ力強く進む町の様子を見ていただくことができます。