良く晴れた9月7日、まだまだ暑さが厳しい日に「鹿狼・山の会」による登山道整備が行われました。
当たり前のように歩いている登山道ですが、雨が降れば流れた水で削られたり、たくさんの人が歩くことで崩れることもあります。もちろん、放っておけば登山道脇の雑草が伸びて、足元が見えずに危険な状態になります。そのため、登山道は常に整備が必要なのです。
今回はその様子を取材させていただきました。

「鹿狼・山の会」は、15年ほど前に鹿狼山の整備や環境保全を目的に、それ以前より活動を行なっていた地元の方々を中心に結成されました。今では、新地町内外に50人ほどの会員数となり、登山道整備だけではなく、定期的に鹿狼山以外の山の登山も楽しむなどの活動を行っています。
この日に集まったのは約20人。まずは会長さんの挨拶と注意事項、整備内容の説明があり、それぞれが道具を手にしてスタート。「みちのくトレイルクラブ」の方も参加して、整備についての指導を行なっていました。

「みちのくトレイルクラブ」は「みちのく潮風トレイル」の整備を行う認定NPO団体で、日本各地で行われる登山道整備に参加し、知識や技術を積み重ねています。鹿狼山の登山道の一部がみちのく潮風トレイルのルートになっていることもあり、毎回の整備に協力しているそうです。

この日のメインとなる作業は「草刈り」と「水切り」の整備。
登山道の中でも一番広くて歩きやすい「樹海コース」には、3〜5mくらいの感覚でコンクリートの水切りが設置されています。

これは、流れた水を登山道の外に誘導して道が削られないようにするためのものですが、その溝はすぐに埋まってしまい機能が果たせなくなってしまいます。
そのため、水切りの上側に溝を掘り直し、登山道の脇の谷の方に水の流れを誘導します。

急な坂になっている場所では、水の流れで削られやすくなるので、今後はどのような整備が必要かを、みちのくトレイルクラブの方に指導を受けていました。

この整備中、山の会発足時の役員で、日本百名山も制覇したという杉平さんに、鹿狼山の魅力を伺いました。

鹿狼山は、海沿いの暖かい地域の里山でありながら、蔵王からの冷たい風が吹き込むため、里山に咲くカタクリやキクザキイチゲだけでなく、ニリンソウやショウジョウバカマなど、鹿狼山より標高の高い山に咲く花も楽しめるとのこと。
それ以外にも「こんな標高でこんな花に会えるなんて」と驚く花もありますが、近年では盗掘も多いそうで、それらの花の名前は、ここでは伏せさせていただきます。ぜひ、春の鹿狼山を歩いて確かめてみてください。
整備をしている間も、たくさんの人が登ってきます。中にはまだ一歳のお子さんを抱いて登るご家族も。きっと若い世代やその子供たちがこの鹿狼山を故郷の山として、大切に受け継いでくれるでしょう。

整備が終わりに近づくと間もなく頂上。この日の眺望は素晴らしく、雲に隠れていることが多い吾妻連峰から、奥羽山脈を辿って宮城県北の船形山まで楽しめました。
たくさんの登山者に、安全に楽しく鹿狼山を楽しんでほしいという、「鹿狼・山の会」の方々の山を愛する気持ちが感じられる、気持ちの良い1日でした。

さて、鹿狼山では、11月29日土曜日と12月13日土曜日に「鹿狼山登山道整備教室」が開催されます。
登山道がどのように整備されているかを知ることは、より山を楽しむことにつながりますので、ぜひご参加をおすすめします。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
URL: https://mitaishinchi.jp/trailtour2025/
文:佐藤敏博(山岳ライター)
宮城県在住。東北の山を中心に、春の花の季節から、冬のバックカントリースキーまで、四季を通じて山を楽しみ、その魅力を伝えている